千里は毎日繰り返される生活に飽きてきていた。大学を卒業してからオフィスレディとして順風満帆な人生を歩んでいる。特に大手というわけでも、お給料がすごくいいわけでもない。でも、会社の人はみんないい人ばかりだし、働きやすいし、生活費には困らないし、オシャレだってそこそこ楽しめている。彼氏は今のところいないが、今年のクリスマスまでにならできてしまうんじゃないかな、というくらいだ。将来の夢を語るような年齢ではないけれどまだまだ若いし、たまには少しくらい夢も見たい。そこで候補の一つに挙がったのがAVに出ることだった。たまの息抜きに女優さんの真似でもいいからやってみたい。ポンと出て主役になれる場を見つけた。現実を忘れ、時を忘れ、快楽にだけ精神を集中する。癖になりそうだった。初めての撮影を終えた千里は身体に若干のほてりを残したまま帰路についた。